
造り手自らが木桶を組み、醸す
杜氏が組み上げた木桶を使い、伝統的製法・生もとで仕込む「木桶生もと」。
小型木桶を使った試験醸造の第二弾「ver.2.0」は蔵を替え、伝統の「八号蔵」で醸しました。
あえてスペックはそのまま、醸す環境、蔵付き酵母の違いがどれだけの変化を生むのかを試みた純米酒の原酒です。
〈試験醸造・第一弾「木桶生もとver1.0」についてはこちら〉※現在は購入できません

賀茂鶴「八号蔵」
1939(昭和14)年に建てられ、1956(昭和31)年に現在の場所へ移転。以来、手造りによる酒造りを守り続けています。
2024(令和6)年からは友安総杜氏が蔵を担い、季節限定酒「大吟醸原酒 あらばしり」をはじめ、吟醸酒を中心とした酒造りを行っています。
きっかけとなった「木桶プロジェクト」

始まりは2018年。賀茂鶴の社内に一つのプロジェクトが立ち上がりました。木製桶の自社補修・製造を目指すプロジェクトです。
酒を仕込む木桶や酒米を蒸す木製の甑(こしき)は保温性と調湿性に優れているため、古くから酒造りの現場で使用されてきました。しかし戦後は、扱いが容易でメンテナンスの手間が少ないホーローやステンレスのタンクに取って代わられ、小型から大型までの仕込み用木桶を手掛ける桶屋は、全国で藤井製桶所一軒のみに。その藤井製桶所も桶師の高齢化を理由に、大型の木桶の受注を停止したいという一報が届きます。
藤井製桶所製の木製甑を使用していた賀茂鶴酒造でも対応を迫られ、思いきって、藤井製桶所の桶師・ 上芝氏と藤井氏に技術指導を依頼。のちに杜氏となる中須賀をはじめとする若手醸造社員を中心に、自ら木桶を補修・製造する「木桶プロジェクト」が本格的にスタート。木桶仕込みに挑戦する大きなきっかけとなりました。
〈※プロジェクトの様子、藤井製桶所の取材記事などの関連コンテンツは下記よりご覧になれます〉
「ver.1.0」での経験を礎に得た、たしかな手応え

前作では、初めての木桶仕込みと生もと造りに挑み、ノウハウのない中、迷いながらの作業が続きました。
中須賀杜氏はその分、分量やタイミング、各工程の勘どころのようなものが、深く身についたといいます。
今回は、中須賀杜氏にとっても、慣れ親しんだ四号蔵から八号蔵へと仕込み場所が替わり、不安がなかったわけではありません。しかし前作での経験を礎にして「ver.2.0」の仕込みは想像以上に順調に、確かな手応えとともに進んでいきました。


搾ったばかりのお酒は、非常に香り高く、米の旨味も「ver1.0」以上に感じることのできる、想像以上の仕上がりでした。
熟成期間を経て、円熟した味わいに

その一方で、ver.1.0にも通じる、搾りたてならではの「若さ」を感じさせる、ほのかな辛味が顔をのぞかせます。
賀茂鶴らしい柔らかな口当たりを引き出すには、やはり適度な熟成期間が必要だと判断しました。より円熟した味わいを目指し、夏以降は保存環境を常温に切り替え、ゆっくりと進む変化を丁寧に見守ることに。

熟成期間に約一年を充て、酒質に変化が生まれました。飲み口に柔らかさが加わり、辛味はおさまりました。口に含むとわずかに木の香り。酸味と米の旨味が調和し、後味にはすっきりとしたキレがあります。

過酷な環境を蔵付き酵母が生き抜いて、独特の力強さを宿す「生もと造り」のお酒は、酒質が劣化しづらく、熟成もゆっくりなため、長期熟成に適しています。
環境の違いが味わいに変化を与えるため、保管場所や保管方法の違いで「自分だけの味わい」を育てるという楽しみを持てるお酒だと、私たちは考えています。

中須賀杜氏は、試験醸造として「ver1.0」「ver.2.0」を重ねる中で、木桶仕込みの経験とノウハウを着実に蓄積し、「木桶生もと」を磨き上げてきました。
そして、万全の体制で臨む三回目の挑戦では、ついに大型木桶による本仕込みに踏み出します。
販売開始は2027年以降を予定。
2022年に木桶を自ら作ってから約4年――。取り組みが実を結ぶ瞬間は、もうすぐそこまで迫っています。
■木桶生もと ver.2.0(純米酒原酒)
アルコール分:20度
原材料名:米(広島県産)、米こうじ(広島県産米)
精米歩合:69%
原料米:山田錦 100%
中須賀杜氏、おすすめの飲み方

最後に、中須賀杜氏にお好みの飲み方を聞いてみました。
「みなさんには、まずは一口、『常温』で味わってほしいです。本来の味わい、香りをお楽しみいただくには、やはり『常温』をおすすめします。その後は、冷やしても、燗でも、温度帯を変えて飲み比べながら、「好みの飲み方」をご自身で探してください。」
では中須賀杜氏の「好みの飲み方」をご紹介。まず、熱々になるまでお酒を温めます。温度は50~60度くらい。しっかり温めきり、飲みながら、ゆっくりと冷ましていきます。40度前後まで下がった「ぬる燗」の温度帯が飲み頃で、より飲み口に柔らかさが増します。口の中で米の旨味が、より広がります。
「最初から40度台で飲み始めるより、温かい状態で長く飲めますし、熱々からぬるめまで色々な温度帯で楽しめるのでおすすめです。」

ちなみにつまみは「僕は何でもOKです!」とのこと。その時身近にある食材・料理と、なんでも一緒に美味しく頂くのが中須賀流です。

〈皆さまへのお願い〉
取り組み始めたばかりの木桶仕込み。その可能性を探るため、お客様の声を集めたいと考えています。QRコード先のアンケートフォームから、味わいについてのご意見などをお寄せください。今後の参考とさせていただきます。
杜氏を務める四号蔵のお酒もぜひ!
中須賀杜氏が担当する「四号蔵」で日頃醸造しているおすすめのお酒もご紹介。
ぜひこの機会に中須賀杜氏が手掛けるレギュラー酒もお楽しみください。















